長岡院長の「歯の話」 三重県鈴鹿市の歯医者さん ホワイト歯科
当医院のインプラントについての考え方
巷で「インプラント」が流行ってきています。私がインプラントに初めて出会ったのは、
大学病院の口腔外科に在籍してすぐのことでした。当時のインプラントは、現在の完成された「最終形態」ではありませんでした。
今は無き、ブレードタイプのインプラントや、サファイア単結晶インプラントとか、わけのわからないものが多くありました。
その当時、(25年前ですが)失敗したインプラントの症例を多くケアしていた口腔外科で、悲惨な症例を見てきました。なんと、CTはもとより、オルソ(歯科用断層撮影装置)も無い歯科医院で施術された例もあったのです。
当時、MRI(磁気断層)が出始めた時期で、医科ではCT(エックス線断層)は当たり前の時代でした。「正確な診断の無いインプラントが、如何に害を及ぼすか」を、目の当たりにしてきました。
インプラントの術式は、口腔外科医なら「一度見ればできる」類の技術だったと認識しています。
どうしてかと言うと、インプラント術式の多くを占める、(基礎である)基本的な外科手術の知識が口腔外科には当たり前にあったからです。口腔外科で手術を行う場合、術前検査は「血液検査・胸部X-P検査・心電図検査を経て、内科受信」が、必ず必要でしたから当然のように、血液検査をした後の検査値を読み込み、胸部X-Pを読影し、心電図の異常値を勉強して、内科医の診断を理解する必要がありました。
術式では、骨折の手術のように、ねじくぎで骨をつなぎ合わせる手術に比べれば、簡単な手術なのです。当医院でも、インプラントの施術時間は一本15分と言ったところです。
現在、当院でもインプラントを施術していますが、以下の理由により、「インプラントしか治療法がない場合」を、当院の適応症例としています。
1.
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全身の医学的検査が必要で、重度の糖尿、高血圧、心臓疾患等で投薬を受けている人には手術できない。
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術後の管理(ケア)をせねばならないが、高齢になって「痴呆症」になったり、引っ越したりして、いずれ施術医院でケアができなくなる。もちろん、インプラントのケアは生涯必用。
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3.
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施術された患者さんは、そのあとの人生で糖尿病などの疾患に侵され、インプラントにトラブルを発生させる可能性がある。
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上顎に埋め込まれたインプラント周辺の「上顎洞」は、加齢とともに大きくなり、インプラント体が、「上顎洞」に突き出てくる。(現在、この問題の解決策は、私の知る限り、ない。)
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5.
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上部構造の寿命は、10~15年と考えられるため、再度、やり替えが必要。
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6.
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私は、今のインプラントは「統一されたケア」が確立されていない為、インプラント治療を受けた患者さんが、施術歯科医院が無くなっても良質なケアを受けられる体制がない限り、積極的に行うべきではないと思う。
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最後に、歯科医として、「患者さんの歯をいかに残すか」を大きな目標として診療に従事している。
しかし、インプラントは「歯の植わっている歯槽骨」が多く残っていればいるほど有利で失敗しにくい。そのため、あってはならないことであるが、「インプラントをする為、積極的に歯を抜く本末転倒な治療」が横行している。
何度も言うが、ケアの維持が困難なインプラントの治療は最小限に抑え、やむなくインプラント治療を選択するときは、ケアの必要性、将来かかるかもしれない全身疾患とインプラントの関係、施術医院がケアできなくなった時のケアの受け方を詳しく話、それを受け入れない患者には、施術を行ってはならない。
ケアできなくなった症例は、最低、上部構造を撤去して清掃しやすくするか、できれば下部構造(インプラントの根の部分)を口腔粘膜で覆い埋伏して、義歯に置き換えるべきと考える
以上は、私の私見に過ぎないことを、明記しておきます。